家庭用冷蔵库の新机能.pdfVIP

258 特集 家電製品の快適性・利便性を支える技術 6. 家庭用冷蔵庫の新機能 The New Feature of Household Refrigerator キーワード：家庭用冷蔵庫，冷蔵，冷凍，使いやすさ，省エネルギー，除霜，熱交換器 Household refrigerator, Cold storage, Refrigeration, Usability, Energy conservation, Defrost, Heat exchanger 柴田　舞子 Maiko SHIBATA 田代　雄亮 Yusuke TASHIRO 1. は　じ　め　に 冷蔵庫は，国内で約400万台/年の市場規模で推移し ており，今後も人間の食生活に半永久的に必要な家電製 品である．また，近年の内食回帰の流れから，冷蔵庫に は，美味しく保存するための食品の鮮度・栄養保存機能 図１　ソフトフリージング機能で冷凍した食品 の向上が求められる．さらに，大容量・省エネは，常に 要求の上位に挙げられる．当社では，おいしさ，使いや を必要な分だけ使用できるように，あらかじめ小分けし すさ，大容量，省エネなどのユーザーニーズを満足し， ておく必要があったが，このような手間も省くことがで 食生活の快適・便利をかなえるべく，様々な機能を開発 きる． し，製品での実現を行ってきた．本稿では，当社の家庭 本ソフトフリージング機能では，従来の一般的な冷凍 用冷蔵庫に搭載されたこれらの機能について紹介する． 温度である－18 ℃よりも高い温度の－7 ℃で凍結，保存 している．そのため，食品の凍結率が低く，凍っている 2. 食品保存の新機能 状態であっても包丁で容易に切断することができる．ま 快適な食生活を実現する上で，冷蔵庫の重要な役割 た，凍結状態であるため，冷蔵保存に比べて保存期間は は，食品のおいしさを長く保つことにある．このため， 長く，2～3週間程度，おいしさを損なわずに保存する 冷凍・冷蔵での保存性の向上は，基本の機能として開発 ことができる． を行ってきた．さらには，保存した食品を使用するとき このように，本ソフトフリージング機能は，冷蔵のよ の利便性にも着目し，調理をアシストする役割に視野を うに切断できる使いやすさと，冷凍の保存性とを兼ね備 広げ，便利においしく保存できる機能を開発し，製品搭 えた機能として，その利便性が評価されている． 載した． さらに，後述する「瞬冷凍」機能との組み合わせを行 2.1　ソフトフリージング機能 うことで，凍結品質の向上を実現した． 食品を冷凍する最大のメリットは，冷凍しない場合に 2.2　過冷却現象を利用した冷凍機能 比べて，保存期間が飛躍的に延長できることにある．し 当社が2007（平成19）年から搭載した「瞬冷凍」機能 かしながら，冷凍した食品を使用する際には，通常，解 とは，過冷却現象を利用した冷凍機能である．過冷却と 凍操作が必要となり，時間と手間を要するという課題が は，物質が凝固点以下の温度でも液体のままである状態 あった． をさす．本冷凍機能では，食品中の水分をこの過冷却状 当社では，1998（平成10）年からソフトフリージング機 態に到達させてから凍結させることが特徴である． 能「切れちゃう冷凍」を搭載している．この機能によれ 凝固