自治制度演習B1-2210618最終文案.pdf

自治制度演習Ｂ 公共経営研究科 ２年 金 丸 利 博 地方自治体における自治基本条例について(５) －自治基本条例の必要性について－ はじめに 現在も進行している地方分権の進捗に合わせて、相当数の地方 治体において「 治基 本条例」の制定がなされている。それらの定義に関して、「 治体の憲法ともいうべき自治 1 体運営を、総合的に定めるもの」、「①住民自治の一層の促進と、②自治体の自己革新を目 2 指した、③最高で基本的な法規としての条例」等があり必ずしも定義が確 したものでは ない。そのような性質をもつ 「 治基本条例」について、その必要性と期待される効果に ついて地方自治体を取り巻く環境の変化という観点から論ずるものとする。 １ 地方分権改革の進捗 自治基本条例に関しては、地方分権の進捗がその制定に関して大きな影響を与えている が、以下地方分権の推移に関して概観するものとする。地方分権に関しては、1993 年の国 会における 「地方分権の推進に関する決議」を一つの端緒とするものである。次いで、1995 年に「地方分権推進法」が成 し、同年当該法律を根拠に「地方分権推進委員会」が発足 している。同委員会では、1996年に 「地方分権推進委員会第１次勧告」を行い、続いて1997 年に「第２次勧告」、「第３次勧告」及び 「第４次勧告」を実施している。さらに1998 年「第 ５次勧告」を行い、2000 年に地方分権一括法が施行された。同委員会では2001 年に 「地方 分権推進委員会最終報告」を行い、未完の分権改革として総括を行っている。これに至る 分権改革の中で、国と地方自治体の関係は大きく変化することとなったが、その中の重要 な論点のひとつが機関委任事務の廃止である。「地方分権推進委員会最終報告」中、機関委 任事務の廃止について、「今次の分権改革では、まず団体 治の拡充方策に取り組むととも に、事務事業の移譲方策よりも広い意味での関与の縮 廃止方策に改革の主眼が置かれる 結果になった。なかでも通達等による関与の縮 廃止、機関・職員 ・資格などにかかわる 必置規制の緩和廃止、補助事業の整理縮 と補助要綱 ・補助要領による補助条件の緩和の ３点については、きわめて具体的な改革が実現されたところである。特に、これらのうち 通達等による関与を縮 廃止するための基本方策として、住民による選挙で選ばれた知事 1 神原勝(2008) 『自治・議会基本条例論』公人の友社p.2 2 神奈川県自治総合研究センター(2004) 『平成14 ・15 年度 治総合センター独自研究報告書 治基本条例』 - 1 - や市町村長を国の下部機関とみて、国の事務を委任し執行させる仕組みである機関委任事 務制度が全面廃止されたことのもつ意義は、きわめて大きい。従前の機関委任事務のうち、 ごく例外的にこの機会に事務そのものを廃止したものや国の直接執行事務としたものを除 いて、その他の従前の機関委任事務はすべて、自治事務か法定受託事務のいずれかに振り 分けられたが、自治事務はもとより法定受託事務もまた 『地方公共団体の事務』であるこ とが明確にされた。そこで、平成 12 年度以降は、地方公共団体には、『国の事務』は皆無 3 となった 」と述べられている。機関委任事務の廃止に象徴される、国と地方 治体の関係 の変化は、①「上下・主従の関係」から「対等・協力の関係」、②「パワーベース」から「ル 4 ール・ベース」、③「非公開かつ不透明な関係」から「公開かつ透明な関係」に変容した。 ２ 法制度 前述の国と地方自治体との関係の変化は地方自治法のうえでも明確に認識されるもので ある。同法第１条の２において、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本と